郷に入らばうどんを喰え
皆さんはそば派だろうか、うどん派だろうか。
あるいは、温かい派か、冷たい派か。
この世界には選択を大いに迷わせる二択というモノがあふれている。
結局、二つに一つを選ぶのは難しいから、「〇〇派」なんて言葉で線を引く。
そうなると私は完全に「そば派」なわけで、さらに付け加えるなら「冷たい派」だ。
比率でいうならそばが8で、うどんは2、そんな男だ。
そばとうどんで10。(RAD並感)
そんな麺類で固めたゆるいアイデンティティを崩す出来事があった。
そのことをお話ししようと思う。
最近、岡山県に私用で赴いた際、友人もいるということで直島なり高松(香川県)にも寄ることとなった。
うどん県…もとい香川県といえば、この話の流れも大抵想像できるだろう。
旅先で出会った「釜バターうどん」が絶品であり…うどん派に鞍替えさせ得たことを…。
当然香川県に足を運んだ以上、うどんに期待するのは当たり前であって、そのハードルといえば、高いものだったと言わざるを得ない。そんな期待とは裏腹に、決して綺麗とは言えない店の外観…。不安と期待が渦巻く中、行列に身を投じる。
地元の常連客であろう人の多くが「釜バターうどん」を頼んでいる。なぜだ…。王道はもっとシンプルで…うどんそのものだけでいける、そんな一品じゃないのかよ…っ!
壁に無造作に張り付けられたメニューに躍らされながら、非情にも順番は回ってくる。私には…決められなかった。だから―――委ねたのだ。
「か」
口が乾く。注文一つが、重く喉に蓋をする。声が枯れる。それでも私は――。
「釜バターうどんひとつ」
そこからは早かった。簡素なテーブルに腰を掛け、少し待つ。
現れたのは、うどんとバター。そして卵。
御託はいい、早く始めよう。
そんな言葉すら置き去りにして、私は≪それ≫をかきこんでいた。
感想は…言わずもがなである。そば派の私をうどんもイケるクチにさせた…とだけお伝えしておこう。
まあ、それだけお伝えしたかったわけだが、綺麗にまとめるために一言。
「郷に入らば郷に従え」
(おわり)
とにかく食え