ウキアシタタズ

頑張れたことを頑張って書きます

穴を掘ったよ

ずいぶん前の話ですが、私は友人と穴を掘りに行きました。読んで字の如く、穴を掘りに行ったのです。今でもよく覚えていて、楽しい思い出だったので、今回はそれについて書きます。

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きっかけ

友達が発案者です。最初に「穴を掘らないか」と言われた時には流石に面食らいましたが、何故か断ることも出来ず、そのまますんなりと受け入れてしまったのがスタートです。メンバーは発案者(以下A)と私、そしてもう1人穴掘りが好きそうな奴(以下B)を呼んだら案の定乗っかってきたので、その3人で地面を抉り続けるハメになりました。

こんな物言いですが、発案者である彼ともう一人にはとても感謝しています。自分ひとりでは穴を掘ろうなんて思いつきませんし、たかが穴掘りでも気付けることがあると思い知らされたからです。 

準備

前もって言っておくと、私以外の2人(特にA)はとてもフリーダムな人たちです。そのため余裕で遅刻したり、犯罪者みたいな格好で来たりします。

発案者のくせに1時間遅刻したAのせいで、私は1人でシャベルを探すハメになりました。しかしシャベル(小)はあっても、大きいものは高く、無意味に穴を掘ることに払う対価としてはあまりに大き過ぎました。それに巨大なシャベルを持って歩いてなんていたら、どう考えても怪しいです。何らかの証拠隠滅を目論むような人物だとは思われたくはありませんでした。

そうして悩んでいるとき、Aがのこのことやって来ました。タンクトップ1枚に何か大きなものを背負っています。なんでしょうか。それは大きなシャベルでした。なんでそんな死体遺棄しそうな格好で来るんだ…。私が警察ならすぐに彼を職務質問するでしょう。そうして全員集まると、私たちは海岸に向かいました。

試練

昼頃集まったので、海でも見ながらご飯を食べようということになり、みんなそれぞれが好きなものをコンビニや付近のお店で購入しました。

結果から言いましょう。

全員の食料の半分が鳥の餌に消えました。

あのさぁ…餌与えんなって看板に書いてあるよね?餌与えてる間にビニールごと持ってかれたじゃん!A一人だけが滅んだならまだしも、私の食事も消えました。どうしてくれるんだ…。ちゃっかりBは守ってました。ヨコセッ!

始動

お腹が満たされることもなく、満点の日差しの中で穴を掘れる場所を探します。場所としては、掘っていて迷惑にならないところで荷物を管理しやすい、海岸の端っこの方で始めることになりました。これは英断だった。

そうび

巨大シャベル・潮干狩りの道具・小さいシャベル・サングラス

なぜAが潮干狩りの道具を持参したかはよく分かりませんが、彼の母のせいにしていたのは覚えています。どういうことだよ…。なんにしても巨大シャベル以外はあまり使い物にならず、役割を交代しながら掘り進めていくことになりました。掘る担当・砂運び担当・休憩とローテーションさせながら私たちはひたすら下に向かっていきました。

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↑潮干狩りのアレ。当然1ミリも掘れません。

挫折

穴を掘る理由も見つからないまま、私たちは同じ作業を淡々と繰り返していました。するとどうでしょうか、最初は窪みだった「それ」はいよいよ「穴」と呼称しても違いない姿へと変容を遂げつつありました。入ってみると腰が見えなくなる位の高さでしょうか。テンションの上がった3人は写真撮影などをして盛り上がっていました。しかし不幸にも数十メートル離れた所でショベルカーが一瞬で人ひとり分の穴を生み出すのを目にしてしまいます。俺らのこの時間は何だったのか…。あちらには目的も、それを確実に達成させるだけの力もあります。

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↑力こそパワーなんだよ!

……とそんな風に思っているのは私だけでした。Bはアニソンをガンガンかけながら掘ってましたし、Aは1人で砂風呂を堪能していました。実際私もそれほど意気込んではいなかったのですが、

「気張らないでいけるところまでいく」みたいな彼らのスタンスが好きなんだなと気付かされます。彼らの基準は「自分がいかに楽しめるか」です。もちろん「他人の目」が大事なシーンは多くありますが、それに疲れている人も少なくないはずです。例えばSNSだったり、就活だったりね。

そんなことを考えつつ、1人で海を見ながら黄昏ている私を彼らは容赦なく巻き込んで、また作業は始まります。

達成

後半戦になり、疲れてくることで無心で掘るようになった結果効率が良くなる。という悲しいサイクルを繰り返し、ついに3m程の深さの穴を完成させました。

穴の底で空を見上げるとハッとします。

「怖い」と。

砂が崩れてきそうとか、そういったモノへの恐怖とは違う、根源的な畏れがそこにはありました。Aはこの恐怖感を「鬱になる」と表現していましたが、確かに一理あります。

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↑一見出れそうですが、地面にスコップを刺して、その柄に乗っているので非常に不安定です。そして滑り落ちて鬱になるの繰り返し。

まず周りの音が聞こえない。そして四方が囲まれており、自力での脱出は難しい。こうしたことが恐怖を誘うのかは分かりませんが、この画像を見てもらえば少しでも伝わるでしょうか。

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↑怖い…怖くない?

「こんなおぞましいもの、消さなければ」

そんな使命感に駆られ、私たちは封印を決意します。しかしタダで埋めるのもつまらないので、人柱を用意することにしました。ジャンケンで負けた人物を埋めなければいけない。そんな強い決意がありました。結果としてはBが敗北、尊い犠牲者第1号です。埋まれ!

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↑発掘現場と化したB氏。ヨイコハマネシテハイケナイヨ。

砂浜で縦に埋まってる奴を私は初めて見ました。身動きの取れない彼で散々遊んだ後、救出に取り掛かろうとしたのですが、これ滅茶苦茶時間かかるんですね。結局日は沈み、完全に撤収したのは19時前くらいでした。掘りすぎィ!多少ギャラリーも湧いてました。

終焉、そしてーーー。 

穴を掘り、そして埋める。一見何も生まれないし、何かを失ったわけでもない。そんな無価値な行為を全力でチャレンジした私たちは何故か満たされていました。傍からすれば無駄そのものなんですが、私たちにとっては…少なくとも私には得るものがありました。

どんなことをやるにしても、それを充実させたり、面白くするのはその人自身なんですよね。無価値だも思うものに価値付けし、意味を見出すことが出来ると知りました。つまり、本人の心の持ちようで、つまらないことも有意義に出来るということです。逆に無価値だと思って惰性で実行していることそのものこそ無価値です。当たり前ですが。

生きていて実利的に得をする、損をするとか、そういうのも悪くないですが、本当に心の持ちようだけで「得だと思うこと」は増やせますし、「損だと思うこと」は減らせます。そういう自己満足を私はこれからもしていきたいと思った出来事でした。

最後だけ真面目に終わらせようとしましたが、この穴掘りは今後人には絶対勧めません。そしていないとは思いますが、絶対に真似しないで下さい。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160813/k10010634691000.html

穴掘ってしばらく経った後のニュースです。無謀な行為は……やめようね!(警告)